東京、大阪、京都などの大都市圏はもちろん、地方の隠れた観光地にも。パンデミック以降、訪日外国人数が急増しています。日本政府観光局(JNTO)によると、2023年3月から8月にかけて毎月300万人を超える来客数を記録し、8月の前年同月比では41.9%増という驚異的な成長だとか。また、2024年4-6月期の訪日外国人旅行消費額は、前年比73.5%増の2兆1,370億円に達すると推計されています。国籍別では、中国、米国、台湾が特に大きな消費を示しており、観光業界にとどまらず、日本の様々なショップがこの流れの恩恵を受けることが期待されています。
免税店になるメリット
免税店として許可を受けることには多くのメリットがあります。以下に主要な点を挙げます。
売上の増加:免税品を購入する外国人観光客が増えることで、売上が大幅に向上します。特に人気のある商品やブランドを取り扱うことで、より多くの集客が期待できます。
新たな顧客層の獲得:外国人旅行者は日本の製品や文化に強い関心を持っています。免税店になることで、国内のお客様とは異なるニーズや購買行動を持つ新しい顧客層をターゲットにできます。
ブランド認知度の向上:免税店として認知されることで、国際的なブランドイメージが向上し、観光客の信頼を得やすくなります。
リピーターの獲得:免税の利点を感じた顧客は、再訪問する可能性が高く、リピーターとしての確保が期待できます。満足度の高いサービスを提供することで、口コミや評価を通じて新たな顧客を呼び込むことも可能です。
観光業界との連携:免税店としての立場を活かし、観光業界や旅行代理店との連携が進むことで、より多くの集客施策を実施できます。例えば、観光ルートに組み込まれたり、特別キャンペーンが展開されたりすることが期待できます。
このように、免税店として許可を受けることは売上の向上だけでなく、ブランド価値の向上や新たなビジネスチャンスを提供する重要なステップです。
免税制度の闇:不正利用の実態とその影響
しかし、現行の消費税免税制度には課題も存在しています。不正利用が横行し、転売目的での購入が多発しています。いわゆる「転売ヤー」は、同じ店舗での多頻度の来店や多量購入を繰り返すことで、明らかに事業用と疑われる購買行動をとります。この状況は、ロイヤル顧客の購入機会を奪い、さらにはブランドのレピュテーションリスクを高める要因となっています。
なお、近年の調査によると、免税制度を利用して1億円以上の「一般物品」および「消耗品」を購入した旅行者のうち、実際に免税購入品を国外に持ち出したのはほんのわずか。大多数の旅行者からは物品の持ち出しが確認されず、消費税を支払わずに出国したため、消費税の滞納額は数十億円に上っているといいます。そして、このような事態が続くと、免税店事業者は追徴課税のリスクにさらされることになります。
追徴課税の警鐘:免税店が直面するリスク
最近、複数の免税店事業者が、免税販売の要件を満たさない取引を行ったとして、追徴課税を受ける事例が発生しています。これらの事例では、免税販売の規定に従わずに、外国人旅行者への課税対象商品の販売が行われていました。
例えば、ある大手免税店では、定期的に来店する顧客に対して過剰な量の商品を販売し、実際には転売を目的とした取引が行われるケースが確認されました。このような行為が続いた結果、税務当局からの監査が入り、約1億円の追徴課税が発生したといいます。
また、別の免税店では、販売記録が不十分であったり、免税の対象商品を明確に区別していなかったために、税務署から指摘を受け、未納の消費税に加えて約5,000万円のペナルティが課される事態となりました。
これらの事例は、免税制度の不正利用を防ぐために、税務当局が厳格な監視を行っていることを示しています。免税店事業者は、適切な手続きを踏み、正確な記録を保持することが求められます。
新しい風が吹く:免税制度の革新と未来
不正利用の対策として、免税制度は2025年度から「リファンド型」へ変更される予定です。以下に、現行制度と新制度の具体的なプロセスの違いを示します。
STEP 1
現行制度
外国人旅行者が旅券等を提示し、免税店で免税対象物品を購入。
新制度
免税店が商品を課税価格で販売し、購入者が免税を希望する場合、旅券を提示。
STEP 2
現行制度
免税店が免税済みの対象物品を旅行者に引き渡し、購入記録情報を国税庁に提供。
新制度
免税店が購入記録情報を国税庁の免税販売管理システムに提供。
STEP 3
現行制度
外国人旅行者が出国時に税関で免税購入品と購入記録情報を提示。
新制度
税関が購入者の旅券を確認し、必要に応じて検査を実施。確認結果を登録し、国税庁に報告。
STEP 4
現行制度
税関が免税購入品を確認できない場合、旅行者から消費税を即時徴収。
新制度
免税店が、税関からの承認を受けた後、免税品購入者に対して消費税を返金。
現行制度では、税関が事後的に確認を行うため、不正利用や転売目的の購入を防ぎきれないケースが多発していました。
新制度では、免税店はその場で免税を適用するのではなく、まずは課税価格で商品を販売します。免税を希望する購入者は、旅券を提示し、税関が確認を行った後に消費税の返金を受ける仕組みとなっています。このプロセスにより、免税店の運営が透明化され、不正利用を事前に防ぐことが期待されています。
成功への道のり:新制度への備え
新しい免税制度に対応するためには、加盟店が以下の準備をする必要があります。
免税店許可申請: 輸出物品販売場(いわゆる免税店)を所轄する税務署に店舗の許可申請を出す必要があります。
スタッフのトレーニング: 新制度の内容や手続きについてスタッフ全員に十分なトレーニングを行う必要があります。特に、旅券の確認方法や、返金手続きについて理解を深めることが重要です。
購入記録の管理システムの整備: 国税庁の免税販売管理システムに正確な購入記録を提供するための管理システムを整備します。これにより、正確なデータを国税庁に送信できるようになります。
ディスプレイと案内の整備: 免税プログラムの内容や手続きについて、看板やポスターを店内に掲示し、外国人観光客に分かりやすく案内します。
データ保存の体制構築: 国税庁に送信した購入記録情報を適切に保存する体制を整えます。保存期間は、免税販売を行った日の属する課税期間の末日から2か月経過した日から7年間です。
適切な商品管理: 免税対象商品と課税対象商品を明確に区別し、適切な管理を行う体制を確立します。これにより、不正利用や追徴課税のリスクを低減できます。
税関との連携強化: 税関と密に連携し、必要な手続きや確認プロセスをスムーズに進められるようにします。
この新制度の導入により、免税店はより透明性のある運営が求められ、健全な商取引が促進されることが期待されます。
新制度の詳細が発表され次第、Adyen Japanでもご紹介していく予定です。新しい施策やビジネスチャンスに関する情報を貴社の成長にお役立てください。
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