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小売におけるオムニチャネルとマルチチャネルの違いを比較
マルチチャネルとオムニチャネルの購入ジャーニーの間には明らかな違いがあります。この記事では、オムニチャネルとマルチチャネルの特徴、メリット、デメリットを比較、どのアプローチが小売業において重要なのか説明します。
昨今、消費者の購買行動は多様なチャネルをまたいで行われます。そのため、顧客が商品を閲覧、購入することができる場所を一つではなく複数用意した上で、顧客が自由に選択できる環境「オムニチャネル」または「マルチチャネル」を整備することが小売業において基本となっています。
オムニチャネル、マルチチャネルという用語は当たり前のように使われていますが、その違いは理解されていますでしょうか?マルチチャネルとオムニチャネルの購入ジャーニーは明確に異なります。
マルチチャネル、オムニチャネルそれぞれの特徴、違い、メリットやデメリットを深く掘り下げていきましょう。
マルチチャネルとは?
マルチチャネルとは、消費者が商品の閲覧、検討、購入などを複数のチャネルで行える状態を表す用語です。マルチチャネルアプローチを採用した場合、顧客は自分の好きなチャネルで企業やブランドと接点を持つことができます。
マルチチャネルジャーニーの特徴
マルチチャネルジャーニーでは、チャネルの選択肢が複数用意されている一方で統合はされていません。つまり、各チャネルはすべて独立した状態で、異なる体験がそこに存在します。
マルチチャネルジャーニーのデメリット
各チャネルでの体験自体は独立していますが、ブランドとの結びつきがあることを忘れてはいけません。故に、消費者がブランドに求める体験を一貫性を保ち構築する必要があります。これができない場合、ブランドイメージの棄損につながるリスクがあります。また、各チャネルの性質は異なり独自の管理要件が必要となることから運用コストの増加を招くことに加え、チャネル間での情報、データ共有がされず顧客それぞれに合った体験を実現することができません。
マルチチャネルジャーニーの例
マルチチャネルの購入ジャーニーの一例が、地下鉄内で某企業の最新コレクションの広告を顧客が見た場合です。この顧客はその後、同社のソーシャルメディアにアクセスして他の商品をチェックし、最終的に同社のオンラインストアで特定の商品の詳細を確認します。試着したい商品があれば、同社の店舗を訪れ、自分に合うサイズがあるかを確認したうえで購入します。
オムニチャネルとは?
マルチチャネルが提供するカスタマージャーニーには説明した通りメリット、デメリットが存在します。そのデメリットを克服し、統合されたチャネルを通じてシームレスなカスタマージャーニーを提供するのがオムニチャネルです。
オムニチャネルジャーニーの特徴
オムニチャネルでは、各チャネルは統合され、顧客の情報、データが共有されます。これにより、前のチャネルで行っていた行動を別のチャネルで再開することができます。また、行動、購買など様々なデータを活用することによって、顧客それぞれに最適化された体験を提供できるという特徴があります。つまり、オムニチャネルが提供するカスタマージャーニーはシームレス、かつパーソナライズされたものになります。
オムニチャネルジャーニーのメリット
オムニチャネルのメリットは、前述したシームレスでパーソナライズされたカスタマージャーニーを構築する点だけではありません。それは、小売業界での競合他社との差別化、選ばれるブランドになるための優位性を与えてくれるという点です。当社の2022年版のリテールレポートによれば、消費者の61%は、オンライン購入商品の店舗での返品に対応している小売企業をひいきするとのことです。これは、オンオフ問わず販売チャネル間で顧客のデータが共有されないと実現できません。
オムニチャネルジャーニーの例
オムニチャネルジャーニーは、顧客がオンラインで注文した商品を店舗で返品する、オンラインで在庫を確認してから実店舗に行くといったシンプルなもので構いません。さまざまなチャネルをつなげることで、顧客が別のチャネルで中断した購入ジャーニーを中断地点から再開できる、顧客対応体験を構築します。
オムニチャネルの課題
オムニチャネル体験は顧客にとってまとまりと一貫性のあるものに感じられるかもしれません。しかし、内部の処理がそれほどスムーズに進んでいない場合もあります。オムニチャネルジャーニーは顧客対応チャネルを効率化するよう構築されますが、往々にして、バックエンドでの処理はまとまりなく入り組んでいます。
Eコマース業務または小売業務のフロントエンドにどのようなチャネルを追加するにしても、不釣り合いなビジネス機能、レガシーアプリケーション、データに基づく断片的な洞察の寄せ集めを増やすことになります。また、複雑性がごく短期間で事業利益に支障をきたす可能性もあります。このことは、まとまりのないバックエンドがフロントエンドの体験に影響をおよぼし始めた場合に特に当てはまります。
オムニチャネルの進化とユニファイドコマース
幸いにして、現在のオムニチャネルの仕組みを向上して、すべての顧客対応システムとバックエンドシステムを一元的なプラットフォームで統合する仕組みに変えることが可能です。
この最終段階はユニファイドコマースと呼ばれます。ユニファイドコマースにより、すべての決済システムと各チャネルのデータを単一のプラットフォームに統合できます。このため、チャネルや地域に関係なく、事業拡大や顧客体験の向上に役立つ新しいテクノロジーをはるかに導入しやすくなります。
すべてのデータを単一のプラットフォームにまとめることで、顧客のニーズの特定が非常に簡単になります。
ユニファイドコマースを実現する方法の1つは、すべての顧客対応システムとバックエンドシステムの決済データを一元的なプラットフォームに統合することです。さまざまなチャネルをカスタマージャーニーの構成要素として扱うことで、顧客のニーズの特定や、迅速な事業拡大に役立つ新しいテクノロジーの導入がより容易になります。
ユニファイドコマースの例
ある購入客が店舗に訪れ、目当ての商品を見つけたものの、自分に合う色またはサイズの在庫がなかったとします。その顧客が店舗を出たり、競合店に行くことがないように、「エンドレスアイル(無限の売り場)」機能で購入完了をサポートできます。この仕組みがあれば、購入客は店舗で在庫品を眺め、目当ての商品を翌日自宅に届けてもらう手配を整えつつ、その場で別の商品を購入することができます。
業務のフロントエンドとバックエンドを統合するこの仕組みにより、顧客側はシームレスな体験を享受できる一方、企業側は顧客の購入行動の全体像をつかむことができます。
オーストラリアのローカルブランドであるR.M.Williamsがユニファイドコマースによるショッピングと決済の体験を強化した方法について、詳細記事をお読みください。
マルチチャネルからオムニチャネルへ
マルチチャネルのカスタマージャーニーは現代の顧客体験の基準となっていますが、最初のステップにすぎません。急速に移り変わるデジタル化された世界では特に言えることですが、第一印象を与えられるチャンスは一度きりです。私たちは、生活に取り入れている新しいチャネルやデバイスをすべて用いて、F1ドライバーのギアチェンジに勝る速さで注意の対象を切り替えています。そのなかで企業としてできることは、ペースを保つことです。
そのためには、オムニチャネル戦略が重要となります。顧客のチャネル間の行き来を可能にする戦略を採用することで、顧客とのコミュニケーションの新しいチャネルや方法に適応する準備が整います。
オムニチャネルからユニファイドコマースへ
しかし、業務のフロントエンドとバックエンドの統合によるメリットを享受できるのだとすれば、オムニチャネルジャーニーの利便性と体験を顧客に提供する段階にとどまる理由はあるでしょうか?ユニファイドコマースを導入すれば、顧客とのすべてのやりとりを単一の強固な基盤に記録できるので、複数のチャネル全体で購入客を簡単に認識し、そのニーズに応えることができます。
決済はユニファイドコマースの導入と成功に極めて重要な役割を果たします。すべての決済システムと、対面、オンライン、アプリといった各チャネルのデータを統合することで、顧客の特定、ニーズの把握、チャネルをまたぐシームレスな体験の推進をより適切に行うことができます。
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