執筆者:Xinying Teo · リスク管理担当APACチームリード
「ビジネスで成功するには、まず何かが売れなくてはならない」。古い決まり文句ではありますが、現在でも変わりません。売上は収益に相当しますから、売上へのコンバージョンを最大にしなければ、収益が損なわれます。企業が成長し、拡大するにあたり、チェックアウトプロセスのフリクションや不正行為のために、不必要に収益を損なわないようにすることが重要です。
多くの企業がオンラインでの業務展開を拡大しながら、新型コロナウイルス感染症の収束後は支出により慎重な姿勢を見せています。これも、収益最適化がビジネス戦略の中でより大きな役割を果たすようになった理由です。
承認率とは?高止まりの理由は?
販売取引に関して、ほとんどの企業が承認率の向上を重視していることはうなずけます。承認率とは、取引が成立する割合です。
承認率は、次の2つの要素で決定されます。
• 承認または拒否される取引の件数
• 当初は成立したものの、その後不正行為が発覚した取引の件数
取引の成立とは売上の増加を意味し、ひいては収益の向上につながるため、企業は高い承認率を目指す必要があります。
ほとんどの場合、承認率というと、実店舗の販売時点情報管理(POS)取引ではなく、オンライン取引と関連があります。この記事では、オンラインのEコマース取引の承認率のことを指しています。
承認率は、様々な理由から、業界によって違いがあります。一般的に、再販業者が関与する業界など、一部の業界はよりハイリスクとみなされています。処理が現地または国外のいずれで行われるかなど、その他の要因も承認率に影響します。詳細については、Adyenの担当者にいつでもお問い合わせください。
承認率の最大化 vs チャージバックによる収益ロス
一般的に、Eコマース事業を展開したりオンライン店舗を運営する場合、特定のリスク設定を設けて、不正取引を防ぐ必要があります。また、チェックアウトプロセスのフリクションを減らし、取引成立の機会を最大化するには、適切なユーザー体験(UX)戦略を策定します。つまり、不正取引の防止と承認率の最大化をバランスよく行う必要があります。
リスク設定が高すぎると、正当な顧客を拒否することになりかねません。反対に設定が低すぎると、不正取引の処理が増えることになり、後から調査や対応の手間が発生する場合があります。
次のような疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。ショッピングプロセス全体で、いずれかの承認手順を省くなどの方法でフリクションが生じるポイントを取り除き、後から収益の回復を試みることはなぜできないのか。この点については、理論的には可能です。
しかし、不正取引を取り消すには、通常、チャージバックを伴います。チャージバックとは、銀行が実施する支払いの返金です。企業は取引金額の返金に応じる義務だけでなく、返金のコストも負担することから、チャージバックは痛手になります。つまり、コストも時間もかかる作業なのです。さらに、VisaやMastercardのような国際ブランドもチャージバックプログラムや加盟店の不正レベルを監視する不正行為防止プログラムを設けています。不正利用率またはチャージバック率が高すぎると、加盟店にはコンプライアンス違反による重いペナルティが科せられる場合があり、このペナルティが取引の合計金額を上回る可能性さえあります。したがって、不正を防止するほうが、不正発覚後に対処するよりも明らかによいのです。
なぜ今リスク管理に注目するのか?
アジア太平洋地域では、約10年にわたり、成長と拡大が重視されてきました。その一方、一部の企業では、取引の損失最小化や収益最大化の優先度が低くなっています。
しかし、パンデミックの間に状況が停滞すると、収益漏れがより重大になりました。収益漏れを気に留めていなかった急成長企業は、自分たちが苦境に陥っていることに突然気付きます。瞬く間に、リスク管理は生き残りをかけた問題になりました。
パンデミックにより、私たちの購買スタイルも変わりました。例えば、パンデミック前と比較すると、オンライン購入者の数が大きく伸びました。以前からオンラインで購入していた人なら決済の不正利用を見きわめて回避する術を知っていますが、多くの購入者が初めてオンラインで買い物をする状況の中、不正利用に不慣れなことが重なって、多くの市場でオンライン決済の不正利用の増加が報告されています。オンライン取引が膨大な件数に上っていることも、不正行為の勝算を高めています。全体として、このような要因により取引の拒否や不正取引が増加してチャージバック件数の増加につながり、すべての要因が収益に悪影響を与えています。
顧客認証と、多様化するアジア太平洋地域で有効なソリューション
この10年の間、Eコマースはパンデミックをきっかけとして急速な成長を遂げ、企業にも不正利用犯にも同じようにチャンスをもたらしています。このため、強力な顧客認証(SCA)に対する関心が世界的に高まっています。
企業や購入者は、ワンタイムパスワード(OTP)や二要素認証(2FA)などのSCA手法をすでによく知っているかもしれません。3DS2(EMV 3DS)を活用する欧州の決済サービス指令(PSD2)も優れた例です。認証によって、購入者のジャーニーに多少のフリクションが生じる可能性がありますが、企業が収益を保護するのに貢献します。
アジア太平洋地域の企業は、多様な文化の要求に応えています。このため、現金、クレジット、決済フローに対する様々なアプローチをが存在する、変化に富んだ決済環境が形成されています。これほど異なる市場で、同じリスク管理設定を適用するのは非現実的であるため、柔軟性と順応性が重要となります。
Adyenのようなエンドツーエンドのグローバル決済サービスプロバイダーの活用は、アジア太平洋地域の企業や世界的な展開を進める企業にとって有益です。第一に、Adyenは、モバイルを含むオンライン、実店舗のチャネル全体で、クレジットカードや現地の決済方法など、購入者が好んで利用する主要な決済方法に対応しています。グローバル決済サービスプロバイダーとして、ショッピング、決済、不正利用の傾向に関する全体像を提供することも可能です。パターンが確認され始めたら、先手を打ってAdyenの加盟店に準備を促したいと考えています。
さらに、Adyenの単一の決済プラットフォームによって、すべてのデータが一元管理されます。このため、購入者の行動を簡単に把握することが可能です。ショッピング体験の向上、ブランドロイヤルティの強化、コンバージョン率のアップも容易に実現できます。たとえば、お得意様であることがわかっていれば、チェックアウトするまでの承認手順を最小限に絞る方法もあります。
リスク、そしてリスク管理は、特に関連する問題に初めて取り組む企業には不安に感じられるかもしれませんが、心配はいりません。リスク管理とは何か、それが顧客体験の強化にどう役立つのか、収益にどのようなプラスの効果があるのかを理解することは、ビジネスを優位に進めていく上で重要です。
続きは、「収益最適化-2:多様な文化の中で急成長を遂げるアジア太平洋地域で重要性を増す決済リスク管理」をご覧ください。
また、貴社のビジネスニーズに適した決済ソリューションのご相談は、今すぐAdyenにお問い合わせください。
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